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丹野まさよしとがんばり隊

丹野まさよしとがんばり隊

復興調査特別委員会:中間報告



           東日本大震災復興調査特別委員会
            調査中間報告 委員長報告概要

 

 東日本大震災復興調査特別委員会は、去る平成24年2月7日に設置され、付託を受けた「震災復興に関すること」について、これまで16回にわたる委員会及び関係団体等懇談会を開催し、調査活動に取り組んでまいりました。委員会の調査経過につきましては、委員会調査中間報告書の1ページから3ページに記載のとおりであります。

 それでは、委員会調査中間報告書の3ページ、2の調査事項の検討結果以降について、報告書を読み上げまして、報告にかえさせていただきます。

2 調査事項の検討結果

(1)閖上地区被災市街地復興土地区画整理事業

 閖上地区の土地区画整理事業については、本調査特別委員会として最も多くの時間を費やし議論を重ねてきた。これまで名取市は、現地再建を目指し、土地区画整理事業による閖上の復興を図る方針で、市民や議会に説明をしてきた。住民の意向調査(2回実施:平成23年9月、平成24年2月)や100人会議、仮設住宅等での住民説明会を実施してきたが、このままでは住民の理解は得られず事業申請は認められないとして、本調査特別委員会の指摘もあり当初予定していた8月中の事業計画の申請を延期し、個別面談(平成24年7月)を実施した。

 これまでの経過を踏まえれば、名取市は今回の個別面談の結果を重く受け止め、被災住民の意向を尊重したまちづくりを進めることが重要である。そして、そのために可能な限りの「復興シミュレーション」を示すべきである。
 以下、これまでの本調査特別委員会での検討結果を示す。

○事業計画と事業区域の変更について

 個別面談の報告では、「現在計画している土地区画整理事業区内に自宅を建築する」が11.5%、「(閖上につくられる)災害公営住宅に移転する」が22.6%で、現在地に再建を希望する方は、34.1%である。
これは、第1回意向調査「復興後どこに住みたいか」の設問で「閖上地区」25.6%よりは8.5ポイント上昇している。

 一方、個別面談で「閖上地区以外に自分で土地住宅を確保して移転する」が22.8%、「既に移転している」が18.6%と、明確に閖上以外で再建を考えているのは41.4%である。
これを第1回意向調査「復興後どこに住みたいか」の設問に対し「その他の名取市内」27.0%、「名取市外」3.8%の合計30.8%と比べると10.6ポイントのプラスである。

 さらに、個別面談で「仮に事業区域を西側に拡大するなら、そこに住宅を建築する」2.0%、「仮に東部道路の西側に新たに居住区域を設定するなら、そこに自宅を建築する」8.4%と回答しており、この方々は条件が満たされなければ閖上地区以外での再建を考えていると想定することができる。これらを考慮すると現地以外で再建を考えている方は51.8%となり、大幅に増加することが予想される。

 これらの結果を見ると、市が提示した現地再建案に対し、「閖上に戻る」、「閖上に戻らない」、「決められない」という割合は、震災直後からあまり変わっていないと見ることができる。問題は、第1回意向調査で「まだ決められない」23.8%の方が、個別面談の結果では「その他」14.1%となっており、今後時間の経過とともに再建への希望を失うことが懸念されることである。



 本調査特別委員会では、そのような観点から、これまでも事業計画について、「土地区画整理事業を基本としながらも、防災集団移転事業の手法を加えることができないか」、「防災集団移転事業の変更を検討すべきではないか」との意見が出されてきた。また、事業区域についても、「現計画では県道塩釜亘理線を中心に東が7、西が3の割合だが、西側に拡大する逆の割合のシミュレーションを示すべきではないか」、「西側に住宅地を移した場合の問題点を検証すべきではないか」とする事業区域の変更を前提とする意見が出された。

 これに対して市は、「個別面談を通し地権者一人一人の意見・要望をお伺いし、見直しが必要かも含めて検討したい」としながら、「ただし、制度上、できることとできないことがあり、すべての要望を聞き届けることは難しいことから、できるだけ見直しを実施する際も最小限に抑えたい」との考え方が示された。現在のように現地再建案への賛同を求めるだけでは状況を打開できないと考える。このままでは、12月に予定されている事業認可に間に合わなくなる。この状況を前進させるためには、事業区域を西側に拡大するなど住民の意向を最大限に考慮した代案を示すべきである。

(2)下増田地区防災集団移転促進事業 

 下増田地区防災集団移転促進事業の意向調査によると北釜・広浦地区では、約8割が集団移転を望んでおり、移転協議会を中心に美田園駅北側に移転のための話し合いが進んでいる。
本調査特別委員会では、北釜地区防災集団移転協議会からの申し入れにより、8月23日に懇談会を実施した。

 移転協議会からは当面の具体的な要望事項について説明があったが、特に、1)移転跡地の土地買収においては介在農地を含めてほしい、2)跡地の買い取り価格と移転先の土地価格差が大きいため、市独自の支援策で価格差を少なくすべき、3)災害危険区域指定後の跡地利用を示してほしいといった要望事項について意見が交換された。

 本調査特別委員会の中でも、これまで同じようなやり取りがあったが、市では介在農地については、「農地転用許可制度によって、公園事業や道路事業の収用による取得は認められているが、目的のない農地の取得はできない」として買い上げはしない。また、土地価格の価格差を縮める支援策についても、「市街化調整区域における住宅団地の整備を考えており、かなり低めの設定としている。土地を借地する制度もある」とし、検討しないとのことであった。

 しかし、閖上地区の区画整理事業がなかなか進展しない状況を考えると、復興事業を先導することになる下増田地区の防災集団移転促進事業について、早期に市独自の支援策を示すべきである。

 西経塚(杉ヶ袋南)、懸向(杉ヶ袋北)地区は発災直後に集団移転を希望したものの、復興が進まない中で住居をリフォームして住む方もあり、移転を希望する世帯と地区にとどまる世帯に分かれている。防災集団移転事業は、コミュニティーに属する全世帯移転を原則としているため、移転に向けての協議は進んでいない。また、当初の震災復興計画案では、第2次防御ラインを西経塚、懸向地区の西側を流れる川内沢川の堤防としていたが、両地区の東側を流れる木曳堀に沿って第2次防御ラインを建設することが可能かどうかの調査・検討が行われているところである。

 この案では西経塚、懸向地区ともに災害危険区域の指定から外れてしまう恐れがあり、防災集団移転の対象ではなくなることにもなりかねない。地区にとどまる世帯の安全を確保するとともに、移転を希望する世帯の意向を実現する対策をとるべきである。

(3)災害公営住宅整備事業 

 閖上地区の個別面談では、地権者以外の方で、今後の住まいについて「災害公営住宅に移転する」は47.3%。さらに、できるならば「東部道路西側に災害公営住宅をつくって欲しい」は20人(6.7%)である。市は、集合型の災害公営住宅の建設に当たっては、「まちを復旧という観点から、閖上、下増田地区が大前提である」、「区画整理事業の進捗状況をみながら建設する」としているが、本調査特別委員会では、「災害公営住宅の建設はスピード感を持って進めるべきとの観点から、既存の公営住宅を災害公営住宅に再整備することも検討すべきである」、「被災住民の意向に沿った建設場所を柔軟に再考すべきだ」という意見が出された。市は人口の分散を問題視しているが、「二度とこんな思いをしたくない」、「精神的に戻れない」とする方々に配慮しなければならない。

 このまま進めることによって、コミュニティーが崩壊してしまうことのほうが問題である。集合型災害公営住宅の建設に当たっては、建設場所や建設手法について、既存公営住宅の活用も踏まえて、制度上可能な方法を柔軟に検討し示すべきである。

 また、北釜地区防災集団移転協議会からは、災害公営住宅の家賃を年収の低い方ばかりでな
く、市長の裁量により一定期間の軽減措置を設ける支援策を求める意見が出されている。これらについても検討すべきである。

3 委員会における中間報告のまとめについて

 本調査特別委員会では、「1閖上地区被災市街地復興土地区画整理事業について」、「2下増田地区防災集団移転促進事業について」、「3災害公営住宅整備事業について」の調査を進めているところである。1については、個別面談の結果を踏まえ、市当局では具体的な見直し案を示したい考えのようだが、本調査特別委員会としても制度上の問題や財源の裏付けなどを検討し、住民の意向に沿ってまちづくりが進められるよう調査を行う必要がある。

 また、2については北釜地区防災集団移転協議会と意見交換会を行い移転先等についての確認を行ったところであり、地区別に集団移転に対する考え方があることから、条件の進行状況に即して集団移転事業を進める必要があると考えられる。

 3については、貞山運河沿いに計画されている耐浪型の災害公営住宅に対する反対が多く、今後、どこの場所に建設するかは検討しなければならないと思われるが、災害公営住宅に入居するしか選択肢がない住民のためにも、災害公営住宅の建設を早期に進めるべきである。

 昨年9月議会において、震災復興計画の基本方針については、新たな未来会議の結果を尊重し議決しているが、個別面談の結果を踏まえ、議会としても考え直す必要がある。

 まちをつくるのは誰のためなのか、まちの復興をうたいながらそこに住まう住民の生活再建についてどうあるべきかが抜けているものと思われる。一日も早い再建を行うものであるならば、安心、安全な土地への移転が必要と考えるものであり、被災者の意向に沿う形での計画づくりを望むものである。
 以上で、本調査特別委員会で調査いたしました事項についての中間報告といたします。




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